蠅に匂いを覚えさせる

キノコ体の KC→MBON シナプスに、ドーパミン依存の可塑性を入れた。 FlyWire v783 コネクトーム(138,639 ニューロン)+ Shiu et al. 2024 の LIF モデル、ブラウザ内の WebAssembly で計算。

脳を読み込んでいます…

ケニヨン細胞の疎な符号

発火していない KC 匂い A で発火 – 匂い B で発火 – 両方 –

5,177 個のケニヨン細胞を、FlyWire の実際の細胞体位置(正面から見た図)で並べてある。 匂いごとに違う一部だけが発火する — この疎な符号が、記憶を匂いごとに分ける土台になる。

MBON の応答(キノコ体の出力)

匂いを出すと、そのとき MBON が何 Hz で発火したかが出る。 罰 はドーパミン細胞 PPL1 が、報酬 は PAM が 担当する区画の MBON(下の「何が起きているのか」を参照)。

学習曲線

A(対にした匂い) B(対にしていない匂い)

縦軸は、その匂いを符号化しているケニヨン細胞から MBON へ向かうシナプスの平均強度。 記憶が実際に蓄えられている場所を直接測っている。1.00 は手つかず。 対にした匂い(A)だけが下がり、対にしていない匂い(B)は残る — これが記憶が匂いごとに分かれている、ということ。

区画ごとのシナプスの強さ

1.00 は生まれたまま、0 は完全に弱まった状態。ドーパミンが届いた区画だけが下がる。

何が起きているのか

蠅が匂いを覚える場所はキノコ体で、学習則は一つだけ知られている: ケニヨン細胞が発火している最中にドーパミンが届くと、その細胞から MBON へのシナプスが弱まる (Hige et al. 2015、Owald & Waddell 2015)。ここではそれをそのまま実装した:

trace[KC] += 1 (発火のたび、τ=40 ms で減衰)
dopa[区画] += w (DAN の発火のたび、τ=100 ms で減衰)
gain −= η × trace[KC] × dopa[区画]

区画(どの DAN がどの MBON を担当するか)は手で入力していない。 同じ区画の DAN と MBON は直接シナプスで結ばれているので、その本数でコネクトームから求めた。 出てきた組み合わせは既知の解剖と一致する — MBON11(= MBON-γ1pedc)の相手は PPL101(= PPL1-γ1pedc)で、MBON 1 細胞あたり 626 シナプス、2 位の 39 シナプスを大きく離している。 罰側の区画は PPL1 が、報酬側は PAM が担当する、という既知の分業もそのまま出てくる。

限界も正直に: 全脳モデルは嗅覚入力を入れると中枢が暴走する(入力を切っても 約 47 万 spikes/s が自走し続ける)ので、ここではキノコ体だけを動かし、 残りの脳は止めてある。だから「覚えた結果その蠅がどう行動するか」までは、このページでは出せない。 KC の点灯率も実際の蠅(数 %)より高い 20〜25% で、これは一律のシナプス重みを使う 元モデルの性質。